1.精霊流し

作詞:さだまさし
作曲:さだまさし

去年のあなたの想い出が
テープレコーダーから こぼれています
あなたのためにお友達も
集まってくれました
二人でこさえたおそろいの
浴衣も今夜は一人で着ます
線香花火が見えますか 空の上から

約束通りに あなたの愛した
レコードも一緒に流しましょう
そしてあなたの 舟のあとを
ついてゆきましょう

私の小さな弟が
何にも知らずに はしゃぎまわって
精霊流しが華やかに始まるのです

あの頃あなたがつま弾いた
ギターを私が奏(ひ)いてみました
いつの間にさびついた糸で
くすり指を切りました
あなたの愛した母さんの
今夜の着物は浅黄色
わずかの間に年老いて 寂しそうです

約束通りに あなたの嫌いな
涙は見せずに 過ごしましょう
そして黙って 舟のあとを
ついてゆきましょう

人ごみの中を縫う様に
静かに時間が通り過ぎます
あなたと私の人生をかばうみたいに


2.雪の朝(シングル・ヴァージョン)


3.蝉時雨(せみしぐれ)


4.19才


5.縁切寺

作詞:さだまさし
作曲:さだまさし

今日鎌倉へ行って来ました
二人で初めて歩いた町へ
今日のあの町は人影少なく
想い出に浸るには十分過ぎて
源氏山から北鎌倉へ
あの日と同じ道程で
たどりついたのは 縁切寺

ちょうどこの寺の山門前で
きみは突然に泣き出して
お願いここだけは 止してあなたとの
糸がもし切れたなら 生きてゆけない
あの日誰かに 頼んで撮った
一枚きりの一緒の写真
納めに来ました 縁切寺

君は今頃 幸せでしょうか
一度だけ町で 見かけたけれど
紫陽花までは まだ間があるから
こっそりと君の名を 呼ばせてください
人の縁とは 不思議なもので
そんな君から 別れの言葉
あれから三年 縁切寺


6.無縁坂

作詞:さだまさし
作曲:さだまさし

母がまだ若い頃 僕の手をひいて
この坂を登る度 いつもため息をついた
ため息つけば それで済む
後だけは見ちゃだめと
笑ってた白い手は とてもやわらかだった

運がいいとか 悪いとか
人は時々 口にするけど
そうゆうことって確かにあると
あなたをみててそう思う

忍ぶ 不忍 無縁坂 かみしめる様な
ささやかな 僕の母の人生

いつかしら僕よりも 母は小さくなった
知らぬまに白い手は とても小さくなった
母はすべてを暦に刻んで
流して来たんだろう
悲しさや苦しさは きっとあったはずなのに

運がいいとか 悪いとか
人は時々 口にするけど
めぐる暦は季節の中で
漂い乍ら過ぎてゆく

忍ぶ 不忍 無縁坂 かみしめる様な
ささやかな 僕の母の人生


7.追伸


8.交響楽

作詞:さだまさし
作曲:さだまさし

煙草をくわえたら 貴方のことを
突然思い出したから
涙の落ちる前に故郷(くに)へ帰ろう
町の居酒屋のヴァイオリン弾きや
似顔絵描きの友達も
今はもういない 古い町へ

今でもそこに あなたがいたら
僕は何ていうだろう
あなたに逢うには 使い残した
時間があまりに 軽すぎて

悔やんではいないよ
想いはつのっても そうさ昔は昔

今から思えば 貴方がワグナーの
交響楽を聞きはじめたのが
二人の別れてゆく 兆になった
何故ならそれから あなたは次第に
飾ることを覚えたから
確かに美しくなったけれど

見栄えのしないおもちゃに飽きた
あなたがいけない訳じゃない
新しい風に その身をまかせ
子供が大人になっただけ

悔やんではいないよ
想いはつのっても そうさ昔は昔

そうさ昔は昔


9.線香花火

作詞:さだまさし
作曲:さだまさし

ひとつふたつみっつ流れ星が落ちる
そのたびきみは 胸の前で手を組む
よっついつつむっつ流れ星が消える
きみの願いは さっきからひとつ
きみは線香花火に 息をこらして
虫の音に消えそうな 小さな声で
いつ帰るのと きいた

あれがカシオペア こちらは白鳥座
ぽつりぽつりと 僕が指さす
きみはひととおり うなずくくせに
みつめているのは 僕の顔ばかり
きみは線香花火の 煙にむせたと
ことりと咳して 涙をぬぐって
送り火のあとは 静かねって

きみの浴衣の帯に ホタルが一匹とまる
露草模様を 信じたんだね
きみへの目かくしみたいに 両手でそっとつつむ
くすり指から するりと逃げる
きみの線香花火を 持つ手が震える

揺らしちゃ駄目だよいってるそばから
火玉がぽとりと落ちて ジュッ


10.雨やどり

作詞:さだまさし
作曲:さだまさし

それはまだ私が神様を信じなかった頃
9月のとある木曜日に雨が降りまして
こんな日に素敵な彼が現れないかと
思ったところへあなたが雨やどり

すいませんねと笑うあなたの笑顔
とても凛凛しくて
前歯から右に四本目に虫歯がありまして
しかたがないので買ったばかりの
スヌーピーのハンカチ
貸してあげたけど 傘の方が良かったかしら

でも爽やかさがとても素敵だったので
そこは苦しい時だけの神だのみ
もしも もしも 出来ることでしたれば
あの人にも一度逢わせて ちょうだいませませ

ところが実に偶然というのは
恐ろしいもので 今年の初詣でに
私の晴着の裾踏んづけて
あ こりゃまたすいませんねと笑う
口元から虫歯がキラリン
夢かと思って ほっぺつねったら 痛かった

そんな馬鹿げた話は
今まで聞いたことがないと
ママも兄貴も死ぬ程に笑いころげる 奴らでして
それでも私が突然 口紅などつけたものだから
おまえ大丈夫かと おでこに手をあてた

本当ならつれて来てみろという
リクエストにお応えして
5月のとある水曜日に彼を呼びまして
自信たっぷりに紹介したらば
彼の靴下に 穴がポカリ
あわてて おさえたけど しっかり見られた

でも爽やかさが とても素敵だわとうけたので
彼が気をよくして急に
もしも もしも 出来ることでしたれば
この人をお嫁さんにちょうだいませませ

その後 私 気を失ってたから
よくわからないけど
目が覚めたらそういう話が すっかり出来あがっていて
おめでとうって言われて も一度気を失って
気がついたら あなたの腕に 雨やどり


11.案山子(かかし)


12.吸殻の風景

作詞:さだまさし
作曲:さだまさし

久し振りね相変らず
元気そうで安心したわ
昔の様に君は笑って
煙草に火をつけて

驚かずに聞いてくれる
あれから私 どうしたと思う
つまるところ
落ち着くとこへ 落ち着いたの私

まさかと思うけど いつまでも
気にしちゃいないでしょうね

陽に灼けた肌が
染になったところで
それはお天道様の
せいじゃないのよ

だからそんな風に
悲しい顔 今夜だけは 止して頂戴
わかるでしょ雨の日には
誰だって傘をさすものよ

みんなはどう元気でいる
私の事覚えてるかしら
あの頃私 子供だったから
みんなを困らせたわ

今になって考えれば
あなたはとても良い人だった
だからこそ
落ち着くとこへ 落ち着いたの二人

人は皆それぞれに自分の
時刻表を持っているのよ

あなたと私の場合は どちらかが
列車を乗り違えただけの事じゃない

だからそんな風に
自分の事いじめるのは 止して頂戴
わかるでしょ風の日には
誰だって目をつぶるわ

それにしても 久し振りね
相変らず優しそうで安心したわ
昔の様に君は笑って
煙草の火を

煙草の火を

煙草の火を 消した


13.秋桜(コスモス)


14.飛梅(とびうめ)

作詞:さだまさし
作曲:さだまさし

心字池にかかる 三つの赤い橋は
一つ目が過去で 二つ目が現在
三つ目の橋で君が 転びそうになった時
初めて君の手に触れた 僕の指
手を合わせた後で 君は神籤を引いて
大吉が出る迄と も一度引き直したね
登り詰めたらあとは 下るしかないと
下るしかないと 気付かなかった
天神様の細道

裏庭を抜けて お石の茶屋へ寄って
君がひとつ 僕が半分 梅ヶ枝餅を喰べた
来年も二人で来れるといいのにねと
僕の声に君は 答えられなかった
時間という樹の 想い出という落葉を
拾い集めるのに 夢中だったね君
あなたがもしも 遠くへ行ってしまったら
私も一夜で 飛んでゆくと云った
忘れたのかい 飛梅

或の日と同じ様に 今 鳩が舞う
東風 吹けば 東風吹かば君は
何処かで想いおこしてくれるだろうか
太宰府は春 いずれにしても春


15.主人公

作詞:さだまさし
作曲:さだまさし

時には 思い出ゆきの
旅行案内書にまかせ
「あの頃」という名の
駅で下りて「昔通り」を歩く
いつもの喫茶には まだ
時の名残りが少し
地下鉄の 駅の前には
「62番」のバス
鈴懸並木の 古い広場と
学生だらけの街
そういえば あなたの服の
模様さえ覚えてる
あなたの眩しい笑顔と
友達の笑い声に
抱かれて私はいつでも
必ずきらめいていた

「或いは」「もしも」だなんて
あなたは嫌ったけど
時を遡る切符があれば
欲しくなる時がある
あそこの別れ道で選びなおせるならって…
勿論 今の私を悲しむつもりはない
確かに自分で選んだ以上精一杯生きる
そうでなきゃ あなたにとても
とてもはずかしいから
あなたは教えてくれた 小さな物語でも
自分の人生の中では 誰もがみな主人公
時折り思い出の中で
あなたは支えてください
私の人生の中では私が主人公だと


16.つゆのあとさき

作詞:さだまさし
作曲:さだまさし

一人歩きを始める 今日は君の卒業式
僕の扉を開けて すこしだけ泪をちらして

さよならと僕が書いた 卒業証書を抱いて
折からの風に少し 心のかわりに髪揺らして mm…

倖せでしたと一言 ありがとうと一言
僕の掌に指で 君が書いた記念写真

君の細い指先に 不似合いなマニキュア
お化粧はお止しと 思えばいらぬおせっかい

※めぐり逢う時は 花びらの中
ほかの誰よりも きれいだったよ
別れ行く時も 花びらの中
君は最後まで やさしかった※

梅雨のあとさきの トパーズ色の風は
遠ざかる 君のあとを かけぬける

ごめんなさいと一言 わすれないと一言
君は息を止めて 次の言葉を探してた

悲しい仔犬の様に ふるえる瞳をふせた
君に確かな事は もう制服はいらない

(※くり返し)

梅雨のあとさきの トパーズ色の風は
遠ざかる 君のあとを かけぬける

Ah… 梅雨のあとさきの トパーズ色の風は
遠ざかる 君のあとを かけぬける

(※くり返し)